安定していく体重

パンを主食にする食生活でひと息つき、また豆腐、卵。肉、ハム、野菜中心のおかずといったスーパー糖質制限生活を続けていくと。また2ヵ月目を迎える前に20キロ減の67キロに戻った。そして、そのままピタッと1年余り変動しなくなった。従って正確に言えば、最初に20キロ減に最速で到達しだのが3週間目。一度不安になって、少し戻した後、再び20牛口減に戻っだのが2ヵ月目だ。そして3ヵ月目を過ぎる頃から全く体重は安定していった。

この頃になると、痩せて以前よりエネルギーを必要としなくなったのか、食欲自体がなくなってきた。つまり、食べようと思っても食べたくなくなった。もっと言えば、糖質制限の目的のために食べるものもなくなってきたのだが、あまりあれこれ食べると飽きて苦しくなるから、むしろ食べなくてもいいと思うようになったのである。

食べるということは、生物にとって生命維持活動の全てだが、異物を食べるという行為そのもの自体がエネルギーを非常に要する。

また食べる過程で有害なものを取り込む可能性があるので、これを排除させる免疫系が発達してきた。これらのメカニズムは、人類にとって飢餓に耐えることを想定している。

そのため、食事によって必要な分量が口から体の中に入ると、脂肪細胞からレプチンという食欲抑制ホルモンが出て、脂肪細胞に働きかけ、エネルギーの代謝を行なっている。

しかし「食べ過ぎ」の状態ではこのレプチンがうまく機能せず、満腹中枢が適切に反応できなくなる。この結果、レプチン抵抗性が高まり、食欲が抑えきれずに食べ続けるという悪循環も起ってくる。

つまり「過食」で食べたいものを食べ過ぎることの矛盾が、食べるものが限られている糖質制限によって修正され、「食欲」そのものが抑制される結果となった。その結果、不必要な「食欲」に悩まされることも少なくなったのである。糖質制限を続けていると、このように身体にとっていい反応が次々と起ってくる。

それは、身体にとって糖質制限食が一種の「プチ断食」に近い状態をもたらすからだ。すなわち体の必要なエネルギー源である糖質の摂取が制限されることで脂肪が燃え、レプチンが適切に働き、満腹中枢が抑えられるのだ。

従って糖質制限食を続けていると、以前より少ない量で満腹感を覚え、「過食」はむしろ止まる。これに対し、糖質を大量に摂取すると、太るだけでなく、満腹中枢が正常に機能しなくなり、更に「過食」となり、それでも「満腹中枢」が働かず、更に太り続けることになる。

これはかなり後で気付いたのだが、メニューが限られてきて同じものばかり食べて、飽きが来た状態というのは「過食」の「食欲」から脱出出来る絶好のチャンス到来ともいえる。

それを無理に食べたいものを探して、無理に食欲を刺激する必要もないと私は考えるようになった。要するに、以前のように食べること自身に、余り興味を持だなくなってしまったのだ。「食欲。それが、どうした」という思いであった。

 

同じものぱかリ食べて飽きが来る3週間目

糖質制限食で禁物なのは、拙速と無理、我慢だった。これを出来るだけせずに、最初は極めてゆるやかに行い、しかも途中で決して制限をゆるめることなく、むしろ加速度的にスピードと質を上げていく。そうでないと短期間に眼を見張るような効果は出ない。

よりゆるい糖質制限でじっくり実践して行ってももちろん効果は出るが、継続する精神力も必要となる。私の場合、最初の3週間に、バンバンバンと糖質を征め、敵の糖尿病の大将の首を取って、戦意を喪失させた。そこから織田信長の如く、サッサと城に戻って次なる敵と戦う作戦である。だから、先手必勝で攻めたのだが、最後の3週間目で「糖質勢」の猛烈な巻き返しにあった。

3週間目、とうとう豆腐や卵も飽きが来て、いよいよ食べるものがなくなってしまったのだ。そこでやむなく、糖質制限ドットコムから、ふすまパンや大豆粉で作ったシナモンパンなどを取り寄せ、緊急避難的にパンという「主食」を復活させることにした。このふすまパンを従来のパン代りにし、おかずを従来のものにするという「修正案」で乗り切ることにした。

だが主食の一時的な復活は喜んだものの、正直言って余り美味しいものではなかった。しかし、よく考えてみると美味しいものなら、いくら糖質が少ないといっても沢山食べてしまう。これでは糖質制限的には意味がなくなる。後から考えれば、これでいいのかもしれないとも思った。

私は以前からご飯よりパン好きで、パンという「主食」があれば、正直ご飯はそれほど食べなくともよかった。そんな点でも、糖質制限食に元々の食生活が合っていた。

3週目の後半、体重計に乗って20キロ減を記録した時、これで当初の急激なダイエットの目的は達したと思い、むしろ減り過ぎが不安になった。
その時よく食べたのが、大豆粉で作った大豆シナモンパンと青春メロンパンだった。大豆シナモンパンは1個糖質3.2g、メロンパンは4.7gである。この方が、ふすまパンに比べて食べやすいのと、無理だと諦めていた「菓子パン」の登場で、つい毎日パクパクと食べ続けてしまった。ふすまパン代りにバターをつけて主食代りにしたことも多かった。その結果、せっかく3週間で20キロ減まで行った体重が5キロ戻って72キロぐらいになった。

これではいけないと1ヵ月目から食べるのを止めて、結局パンが「主食」という考え方を捨てることにしたのである。このように、行ったりきたりが当然起こる。しかし、それを受け入れつつ、あくまで糖質制限の道を進むことが大切なのだ。それは、「健康」への一里塚である。

この大豆シナモンパンと青春メロンパンは糖質制限スイーツの傑作なので、主食にしない程度で、その後も期間を置いて時々注文している。

 

メニューがすぐ底を突いた2週間目

糖質制限による脅威的なダイエット効果が実感できるまでは、こうして従来好物だった食事メニューを少しずつ遠ざける毎日となった。

するとやがて食べるものが無くなってくる。しかし、ここから後戻りしては、元の黙阿弥だ。糖尿病の場合、生活習慣、肥満、インスリン抵抗性、高血圧、高脂血症、食後高血糖、インスリン分泌不全、糖尿病、腎症、網膜症、神経症、虚血性心疾患、透析、失明、脳卒中、認知症、心不全という「メタボリックドミノ」の連鎖反応が起こってくる。

一度倒れだしたらなかなか止められないこの「ドミノ倒し」を少しでも上流で食い止めることが必要だ。それには、糖質制限食を進めると同時に、好きなものを食べ過ぎないという「過食」を改めることが重要になってくる。

好物を少なくするということは、健康的に見ても非常にいいことなのだ。

だがあまりに急に「好物」を減らしていくと、食べるものがなくなってくる。これに悩まされたのが2週間目だった。この時、糖質制限による反動や食習慣の急激な変更による揺り戻し、食べるものがないと空腹感などが同時多発的に発生し、それなら以前の食生活に戻した方がいいという「悪魔の囁き」が起る。

それを防ぐには、とにかく糖質制限を実行しつつ、糖質制限の範囲の中で好きなメニューや好物を少しずつ新開発していくしかない。

私の場合、その「継ぎ」となったのが、豆腐料理だった。

豆腐は「畑の肉」といわれる大豆から作られ、タンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれ、腸内環境を整える食物繊維も多い。また、血液中の余分なコレステロールや中性脂肪を減らし、脂質の酸化を抑制する成分、サポニンも含まれている。なのに、100グラム中の糖質量は木坦豆腐なら1.2g、絹ごし豆腐でも1.7gだ。白飯がご飯茶碗一杯(約150g)で、55.3gという糖質量を考えると、豆腐の持つ偉大さ、有り難さが分る。

もうひとつ豆腐が有り難いのは、主食に代る食事のカサが保て、淡白な昧で比較的飽き難いということである。私も、糖質制限食で最も辛い2週間目は、もっぱら豆腐料理に頼った。例えば、沖縄でよく食べられていたゴーヤチャンプル。これは以前からの好物であったので、一番苦しい時に食べて元気を取り戻した。続いて「満腹ダイエット」に載っていた「厚揚げたっぷりツナサラダ」「厚揚げのたらこマヨネーズグラタン」など新作も試した。だが、現実には厚揚げばかりそう沢山食べられるわけではない。結局、これも一回で終った。

長続きしているのは、塩を振った溶き卵に角切りの豆腐を入れ、ゴマ油で炒める「韓国風ジョン」である。これは手軽に出来て、飽きないので、一人で朝食を作る時など、トースト代りにしてハムサラダなどとよく食べた。

あるいは、冷奴や湯豆腐をトッピングを変えて食べる。豆腐料理はあまり手を加え過ぎると変に自己主張して飽きてくる。野菜鍋などに入れ、あくまでカサを増やすために使うと重宝する。

この他、炒り豆腐にしたり、上にレトルトカレーなどをかけてみたが、一時しのぎにはなってもやがて飽きてくる。

豆腐は、自らが得点するFWではなく、チームのコンビネーションープレーの中で、時折鋭いパスを出し、得点にも絡む香川の如く、糖質制限食にとっては大変貴重な存在だと言える。

もう一人の貴重なプレイヤーが「卵」だった。卵も↓個の糖質量は0.2gで、糖質制限食にとっては、まさに沢山食べても問題はない。卵にはバランス良く含まれた必須アミノ酸、糖尿病予防にも有効なビタミンE、コレステロールを溶かすレシチンなどの含有量もある。以前は卵を食べるとコレステロールが上がるという指摘があったが、あれは草食動物であるウサギに無理矢理大量の卵を食べさせて調べた研究データで、専門家の間でもかなり無理があるといわれている。

この卵を使って、「満腹ダイエット」に載っていた「ゆで卵とトマトのマスタード和え」や「ゆで卵とブロッコリーのグラタン」などを作った。が、これも長く続かず1回で終った。卵はやはり、通常のゆで卵にするかオムレツ、あるいはその中に豆腐やハム、などを入れ、スパニッシューオムレツ風に増量するなどの基本的な料理が、やはり飽きがこ
なくて一番美味しいのだ。

あるいは、私か朝食を一人で作る時の定盤、「トマトと目玉焼きのオリーブオイル蒸し」である。卵は豆腐以上に毎日献立に使うものだけに、やはり独立して主張させず、他の野菜やハムなどに加えて、味を複合的にし、満足感を出したい時に使うぐらいがいい。

サッカーで言うなら、遠藤みたいに攻撃に転ずる時に要になったり、守りの最前線に立つ重要な選手である。

豆腐と卵、この二つの名プレイヤーは、糖質制限食2週間目の本当に苦しい時に大活躍してくれた。しかし、重宝するからといって毎日使い続けるとやがて彼らも疲労してくる。

それが糖質制限3週目に訪れたピンチだった。こうして、豆腐や卵ばかり食べていても飽きてしまい、食べるものが再度底を突いてきたのだ。

 

衣をはがしたとんかつ

ダイエット中はダム湖に欲望は貯まる。無性にとんかつが食べたくなる時が襲ってくる。そんな時は、更なる体重減少や、検査数値を見つつ、医師流に「まあ、ええやろ」と自分で判断し、食べる順序はそのままで、衣をつけたまま二、三切れ食べ、残りは衣を取る。

こうすると「とんかつ」を殆んど食べたという気になる。私の記憶では、糖質制限1年目に、3回だけダム湖が貯まったので、衣をはがしたとんかつを食べて、放水した。

それから更に1年して、衣をつけたとんかつを、二、三切れ食べた。とんかつを食べたのはこの4回だけだ。

3年目に入った今年は、二、三切れ衣をつけて食べ、後は衣のついた肉を残した。こうして、少しずつ「とんかつ」の魅力から離れていくことで、無理なく「とんかつ好き」人間から変身することが出来たのである。

一方で、「美味しい肉のカツ」が食べたいという残党がまだ心の中に残っている。そこで最近覚えたのが、ウィーン風のとんかつ「ウィンナー・シェニッツェル」だ。これは、肉を薄く伸ばし、パン粉少しと粉チーズをまぶして、カラッと揚げる。日本風の小麦粉たっぷりのとんかつと違い、糖質量は遥かに少なく、非常に上品である。これを切って、野菜サラダの具として散りばめると、肉単品で食べるより、食事のバランスが遥かによくなる。しかも、ウィーン風カツレツにすれば、和風のとんかつ定食のご飯も不必要になる。

日本のとんかつ定食では、山盛りのキャベツに、糖質タップリの甘辛いウスターソースをたっぷりとかけ、塩辛いとん汁を飲む。その結果、白いご飯で口の中をサッパリさせたくなり、つい糖質を摂ってしまう。ならば、そのご飯を食べる機会をなくす、ウィーン風カツレツーサラダをたっぷり作って、それと豆腐の入った野菜スープなどで、新しい料理として完結させてしまえばいいのだ。

こうやって次々とかつでの「好物」を遠ざけていった。慣れとは怖しいもので、今では「とんかつ定食」を見ても、さして美味しい料理とは思えないようになった。どうせ肉を食べるなら、小麦粉の衣などつけずに、そのまま網焼きにするなど、もっと美味しい方法が沢山あるのになどと思ってしまう次第である。こうして、食生活の趣味を糖質制限を軸して、180度変えていったのである。

この場合も、一気にやるより、ゆっくり、じっくり「改革」に取り組んでいかないと、それまでの食習慣という「抵抗勢力」にどこかで巻き返されかねない。

だから、少しずつ、しかし確実に糖質制限維新の目的を達するため、日々の改革を積み重ねて行く必要がある。

 

食べるものが何もないと感じた1週間目

ダイエット中、何といっても辛かったのが、糖質制限食を始めた最初の1週間だった。糖質の多い主食を食べないことに決めたが、では代りに何を食べればいいのか最初は何も分らず、これまで食べていた全ての食品が食べられないのではないかと錯覚してしまった。これは裏を返せば、それだけ日々の食生活が糖質過多に陷っていたという証明なのだが、スーパー糖質制限を開始したその日から、朝食は何とかしのいだものの、次の食事は何にしようかと途方に暮れてしまった。

仕方無く、知り合いから送られた「満腹ダイエット」から、食べられそうなメニューを作った。例えば、糖質オフのとんかつなら食べられるだろうと、パン粉の代りに高野豆腐を使い、パン粉の大きさ程度に包丁で高野豆腐を削る。こんなことは何時まで出来るだろうかとも思い、正直言って焦った。

高野豆腐のとんかつは、まずまずの昧だったが、従来のとんかつに似せて料理すると、どうしても従来のものの方が食べたくなる。

そこで意を決し、これはいけないと最初の1回で止めてしまった。

だが、とんかつを食べたいという「欲求」は定期的に湧いてくる。これをどうするか、私は考えた。まずは、当初の第一目的である糖質制限ダイエットの結果を出すまで「とんかつ禁止令」を自分に課すことにした。そして、これを達成した暁には、とんかつ屋に行って、一度食べてもいいという「条件」を付けたのである。

これを実現すれば、久し振りにとんかつが食べられる。そんな「夢」だけでいい。それで最も重要な初期の3週間は乗り切れた。

これで体重20キロ減を実現すると、すぐとんかつ屋に行きたくなると誰もが考える。実は、そうはならない。何故なら、その時点で見違える程、痩せてしまっているので、せっかく手にした「喜び」を手放したくないと思うようになるのだ。

だから、夢はまだ、しばらく取っておく。

しかし、また放っておくと、その「とんかつの夢」が不必要に膨らんでくる。こんな時には、ダムの貯水湖に貯まっだ水のように、時々放出しなくては、ダム湖自体が溢れ出る怖れがあり、糖質制限ダムも決壊しかねない。

そこで、全く意識せず、仕事が終った時などに、ごく普通のとんかつ屋に入ってみた。

この時、とんかつの名店や極上のとんかつを目指してしまうと、その味に夢中になってしまう。あくまで普通のとんかつ屋でいいのである。

この際も糖質制限を意識して、最初はキャベツ、次にとん汁、そしてとんかつの衣をはずして肉だけを食べる。こうして久し振りにとんかつを食べたが、正直余り美味しくはなかった。糖質制限食的には、それでいいのだ。とんかつというのは、それほど美味しいものではないと思ってしまえるからである。

美味しかったら、また食べたくなる。だから、せっかく食べても余り美味しくない食べ方をして、とんかつとはこんなものかと、自分から自然に遠ざけていけばいい。