メニューがすぐ底を突いた2週間目

糖質制限による脅威的なダイエット効果が実感できるまでは、こうして従来好物だった食事メニューを少しずつ遠ざける毎日となった。

するとやがて食べるものが無くなってくる。しかし、ここから後戻りしては、元の黙阿弥だ。糖尿病の場合、生活習慣、肥満、インスリン抵抗性、高血圧、高脂血症、食後高血糖、インスリン分泌不全、糖尿病、腎症、網膜症、神経症、虚血性心疾患、透析、失明、脳卒中、認知症、心不全という「メタボリックドミノ」の連鎖反応が起こってくる。

一度倒れだしたらなかなか止められないこの「ドミノ倒し」を少しでも上流で食い止めることが必要だ。それには、糖質制限食を進めると同時に、好きなものを食べ過ぎないという「過食」を改めることが重要になってくる。

好物を少なくするということは、健康的に見ても非常にいいことなのだ。

だがあまりに急に「好物」を減らしていくと、食べるものがなくなってくる。これに悩まされたのが2週間目だった。この時、糖質制限による反動や食習慣の急激な変更による揺り戻し、食べるものがないと空腹感などが同時多発的に発生し、それなら以前の食生活に戻した方がいいという「悪魔の囁き」が起る。

それを防ぐには、とにかく糖質制限を実行しつつ、糖質制限の範囲の中で好きなメニューや好物を少しずつ新開発していくしかない。

私の場合、その「継ぎ」となったのが、豆腐料理だった。

豆腐は「畑の肉」といわれる大豆から作られ、タンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれ、腸内環境を整える食物繊維も多い。また、血液中の余分なコレステロールや中性脂肪を減らし、脂質の酸化を抑制する成分、サポニンも含まれている。なのに、100グラム中の糖質量は木坦豆腐なら1.2g、絹ごし豆腐でも1.7gだ。白飯がご飯茶碗一杯(約150g)で、55.3gという糖質量を考えると、豆腐の持つ偉大さ、有り難さが分る。

もうひとつ豆腐が有り難いのは、主食に代る食事のカサが保て、淡白な昧で比較的飽き難いということである。私も、糖質制限食で最も辛い2週間目は、もっぱら豆腐料理に頼った。例えば、沖縄でよく食べられていたゴーヤチャンプル。これは以前からの好物であったので、一番苦しい時に食べて元気を取り戻した。続いて「満腹ダイエット」に載っていた「厚揚げたっぷりツナサラダ」「厚揚げのたらこマヨネーズグラタン」など新作も試した。だが、現実には厚揚げばかりそう沢山食べられるわけではない。結局、これも一回で終った。

長続きしているのは、塩を振った溶き卵に角切りの豆腐を入れ、ゴマ油で炒める「韓国風ジョン」である。これは手軽に出来て、飽きないので、一人で朝食を作る時など、トースト代りにしてハムサラダなどとよく食べた。

あるいは、冷奴や湯豆腐をトッピングを変えて食べる。豆腐料理はあまり手を加え過ぎると変に自己主張して飽きてくる。野菜鍋などに入れ、あくまでカサを増やすために使うと重宝する。

この他、炒り豆腐にしたり、上にレトルトカレーなどをかけてみたが、一時しのぎにはなってもやがて飽きてくる。

豆腐は、自らが得点するFWではなく、チームのコンビネーションープレーの中で、時折鋭いパスを出し、得点にも絡む香川の如く、糖質制限食にとっては大変貴重な存在だと言える。

もう一人の貴重なプレイヤーが「卵」だった。卵も↓個の糖質量は0.2gで、糖質制限食にとっては、まさに沢山食べても問題はない。卵にはバランス良く含まれた必須アミノ酸、糖尿病予防にも有効なビタミンE、コレステロールを溶かすレシチンなどの含有量もある。以前は卵を食べるとコレステロールが上がるという指摘があったが、あれは草食動物であるウサギに無理矢理大量の卵を食べさせて調べた研究データで、専門家の間でもかなり無理があるといわれている。

この卵を使って、「満腹ダイエット」に載っていた「ゆで卵とトマトのマスタード和え」や「ゆで卵とブロッコリーのグラタン」などを作った。が、これも長く続かず1回で終った。卵はやはり、通常のゆで卵にするかオムレツ、あるいはその中に豆腐やハム、などを入れ、スパニッシューオムレツ風に増量するなどの基本的な料理が、やはり飽きがこ
なくて一番美味しいのだ。

あるいは、私か朝食を一人で作る時の定盤、「トマトと目玉焼きのオリーブオイル蒸し」である。卵は豆腐以上に毎日献立に使うものだけに、やはり独立して主張させず、他の野菜やハムなどに加えて、味を複合的にし、満足感を出したい時に使うぐらいがいい。

サッカーで言うなら、遠藤みたいに攻撃に転ずる時に要になったり、守りの最前線に立つ重要な選手である。

豆腐と卵、この二つの名プレイヤーは、糖質制限食2週間目の本当に苦しい時に大活躍してくれた。しかし、重宝するからといって毎日使い続けるとやがて彼らも疲労してくる。

それが糖質制限3週目に訪れたピンチだった。こうして、豆腐や卵ばかり食べていても飽きてしまい、食べるものが再度底を突いてきたのだ。